第5回 少額債権における回収〜支払い督促

1.支払督促とは

 支払督促とは、金銭等の給付を目的とする請求について債権者の申立てにより、裁判所書記官が督促状を発送する督促手続です。支払督促は最終的に「仮執行宣言付支払督促」という債務名義となり(民事執行法22条4号)、それに基づく強制執行が可能となります。

 

2.支払督促の特徴

(1)書面審査

 申立書を受理した裁判所書記官は、提出した書類の形式に不備がなければ証拠等により審理をすることなく、支払督促を発送します。証拠等の収集等には、時間と手間を要しますから債権者側の負担は訴訟と比較すると軽いです。

 送達方法は、公示送達によることができないため、債務者が行方不明などの場合は、事実上行えないことになります。
 

(2)申立先

 支払督促の申立ては、金額の多寡にかかわらず債務者の住所地または主たる営業所等の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して行います(民事訴訟法383条1項)。この申立先は原則として専属的なものであり、訴訟のように契約書等により合意管轄を定めることはできません。郵送による申立ても可能です。

 

3.督促異議

督促異議とは

 支払督促は、債務者の意見を聞かず発送されますが、債務者側の不服申し立ての手段として、「督促異議(民事訴訟法386条2項)」の制度が設けられています。督促異議は請求の原因となっている事実関係に誤認があるとか、金額に誤りがある場合だけでなく、「分割払いにして欲しい。」「何日まで待って欲しい。」といった支払について話合いをしたいという場合にも行われます。具体的には、支払督促に同封されている異議申立書に、債務者の要望を記載して裁判所に提出するのですが、督促異議により争いは通常訴訟に移行することになります。

 相手方が申立書に、こちらの主張を認めたうえで分割払いなどの要望を記載した場合には、通常訴訟の席上で特に面倒な証拠の提出等を行うことなく和解を行うことができます。争いのない案件の場合は、支払督促を利用すればかなりの労力の削減につながるでしょう。

 

4.支払督促の利用は140万以内で利用する

 支払督促は、仮に1000万円の債権額でも1億円の債権額でも利用することができますが、督促異議が出て、通常訴訟に移行することを考えると、金額では140万円以内で利用することをお奨めします。督促異議がでると通常訴訟に移行しますが、管轄を持つのは140万円以内の案件であれば簡易裁判所が、140万円を超える場合は地方裁判所が管轄を持ちます。裁判は原則として、裁判を起こした会社の代表取締役(社長)自身が出廷するか、弁護士、司法書士に依頼して代わりに出廷してもらうことになります。簡易裁判所では特例として、許可代理人制度(民事訴訟法54条1項)という制度があり、これを利用すると弁護士等以外の自社の社員を代理人として出廷させることができます。弁護士等に依頼するとそれなりに費用がかかることになりますが、自社の社員であればコストをかけずに裁判をすることができます。実際に許可代理人制度を利用して、多くの会社が裁判をしています。

 なお、土地管轄にも注意が必要です。先に解説したとおり、支払督促は債務者の住所地等を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して行いますが、督促異議により通常訴訟も債務者の住所地等の裁判所で行われます。そのため債務者が遠方に住んでいたりする場合には、債権者がわざわざ出向く必要があるため、注意が必要です。


 

 

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筆者紹介

司法書士法人F&Partners 代表社員北詰健太郎

大阪市中央区内本町一丁目1番1号OCTビル3階

ホームページ:http://www.mishukin.com/

主な著書、著作

 

「少額債権の管理・保全・回収の実務」(共著 商事法務 2015年)

「Q&Aと記載例から学ぶ!!BtoBの少額債権の管理・保全・回収の実務」(NBL1019号・1021号・1023号・1025号・1027号・1029号/商事法務)
「すぐ使える 債権回収基礎講座」(登記情報613号・616号・618号/金融財政事情研究会)ほか多数

 

 

一般社団法人全国銀行協会ホームページ:http://www.zenginkyo.or.jp/news/2013/12/05140000.html

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